投資で重要なのはリスクをしっかりと抑えておくことです。
「仮想通貨投資で億り人になった!」
「不動産投資で不労収入を実現した!」
など、投資で成功した人のニュースを耳にすることは増えています。しかし、多くの人は、投資のリターンの面ばかりに注目して、成功するために取ったリスクに耳を傾けることはほとんどありません。
「仮想通貨投資で億り人になった!」人は、失敗したら資産がゼロになるようなリスクを取って偶然にも上手くいっただけなのかもしれません。
「不動産投資で不労収入を実現した!」人は、その裏では多額の借金を背負っていて、返済している途中なのかもしれません。
いずれにせよ、投資で上手くいったニュースを見て、そのリターンだけに目が奪われて投資をやってみようと考えるのは危険な思考であると言わざるを得ません。
例えば、年末の宝くじが当たって1億円以上のお金を掴んだ人は毎年誕生しています。しかし、だからといって「宝くじを買おう!」とはならないはずです。なぜなら、「宝くじを買って1等が当たる確率は天文学的確率だ」と理解しているからです。
しかし、仮想通貨投資や不動産投資などで大金を掴んだ事例に対しては、多くの人はリスクの観点が抜け落ちてしまいがちです。メディアに登場する投資で成功した人は、宝くじ当選者と同じように生存バイアスで生き残っただけかもしれないのです。
投資において堅実なリターンを長期に渡って実現するには、投資のリスクを抑えておくことが何よりも重要になってきます。
【投資の基本】リスクやリターンって?
経済新聞や投資の勉強をしていると、「リスク」「リターン」「期待値」という言葉を度々耳にします。しかし、これらの用語をちゃんと理解している人は少数派です。
投資の基本であるリスクやリターン、期待値について正しい認識を身に付けておきましょう。
そもそもリスクって何?
リスクとは、経済学的な意味では、ある事象の変動に関する不確実性を指します。
投資におけるリスクとは、「その投資をすることによって、失う可能性がある資金額」だと認識しておけば問題ありません。
年末ジャンボ宝くじを例に、投資のリスクについて考えてみましょう。
年末ジャンボ宝くじは1枚300円です。仮に年末ジャンボ宝くじを100枚買ったとすると、失う可能性がある資金(リスク)は、全て外れた場合に最大で3万円となります。
投資の場合は、宝くじのように単純にリスクを求めることはできません。
例えば、ある株を100万円分買ったとしても、いつまで持ち続けるのかは投資家の自由です。しかし、これではリスクを算出することはできません。最悪のケースでは、その企業が倒産した場合に株券は0円になりますが、これは超レアケースであるため、現実的なリスク計算とするには不適格です。
このため、投資におけるリスクの考え方は、「何円になったら損切りするか?」から導くことが一般的です。
例えば、ある株を100万円分買ったとして、「-10%になったら損切りしよう」という計画のもとで投資を行えば、リスクは10万円となります。
リターンや期待値って?
投資におけるリスクは、リスク単体では評価することができません。リスクは、投資の見返りとなるリターン、および期待値とセットで考えることが重要です。
リターンとは、「その投資をすることによって、得られる可能性がある資金額」を意味します。
年末ジャンボ宝くじを例にリターンについて考えてみると、最大のリターンは1等が当選した場合の7億円になります。しかし、年末ジャンボ宝くじで1等が当選する確率は0.000005%となっています。これは分数にすると、2000万分の1となります。
リターンを正しく評価するには、「得られる金額」と「実現する確率」を掛け算して期待リターンを算出する必要があり、期待リターンからリスクを差し引いた値は「期待値」と呼ばれます。
年末ジャンボ宝くじの1等の期待リターンは7億円×2000万分の1=35円となり、1等から7等まで含めた年末ジャンボ宝くじ全体の期待リターンは約150円となります。年末ジャンボ宝くじのリスクは1本300円であるため、期待値は150円-300円=-150円となります。
つまり、期待値で考えれば、宝くじは買えば買うほど損することが分かります。これが、宝くじは「貧乏人の借金」と呼ばれる所以です。
投資においては、期待値プラスの投資を繰り返し行うことが重要です。
株式投資においては、66%の確率で-1%の損切り、33%の確率で+3%の利益確定になるような投資は期待値プラスとなります。
※この場合の期待値は、(33%×3%)-(66%×1%)=+0.34%
株式投資のリスク
投資の王道である株式投資のリスクを見ていきましょう。
株式投資のリスクというと、経営破綻や有価証券報告書への虚偽記載を発表したことで上場廃止となり、株券が紙くずになってしまうことを連想する人は少なくありません。しかし、上場廃止は超レアケースとなっています。
元本割れする可能性がある
株式は常にマーケットで株価が変動しているため、買った株が元本より下がることにより、元本割れする可能性を常に抱えています。
このように価格が変動することによる元本割れのリスクは「価格変動リスク」と呼ばれます。
株式市場では、新興市場の銘柄は価格変動リスクが大きくなり、東証一部の有名な銘柄であれば価格変動リスクは小さくなります。当然ながら、価格変動リスクが大きい銘柄であればあるほど、期待できるリターンも大きくなります。
リスクの大きい新興銘柄は元本を数倍にできる可能性がある一方で、暴落によって元本が半分から3分の1以下になることもザラです。
一方、東証一部の有名企業の銘柄は、数ヶ月で数倍になるようなこともありませんが、新興銘柄のような大暴落が起こる可能性も小さくなっています。
投資した会社が上場廃止になる可能性がある
「株式投資のリスク」と聞いて多くの人が連想するのは、かつてのライブドアのように上場廃止となって株券が紙くずになってしまうというものです。
上場企業は、
- 経営破綻による民事再生法申請
- 有価証券報告書へ虚偽記載
- その他上場ルールの違反
をすると、上場廃止となってしまいます。
この場合は、投資家が保有していた株式は、文字通りの紙くずになってしまいます。とはいえ、東証一部に上場している銘柄が上場廃止になることは、まずあり得ません。
2018年に東証一部上場銘柄で上場廃止となったのは、2018年6月22日に経営破綻による会社更生手続きを申請した日本海洋掘削だけです。
また、日本海洋掘削の上場廃止が発表されたときは、暴落はしたものの、日本海洋掘削の株主が上場廃止になるまでに株を売る猶予は残されており、0円で紙くずになるという事態を避けるチャンスは十分にありました。
不動産投資のリスク
近年、サラリーマンに人気の投資となっている不動産投資のリスクについて見ていきましょう。
不動産投資は、株式投資に比べて長期間に渡って利益を得られることを魅力に感じて始めるサラリーマンが増えています。しかし、不動産投資はリスクが非常に大きい投資であることも確かです。
借金をする必要がある
人口減少が進む日本で不動産価格が上昇する可能性があるのは、東京一極集中で人口が増加している東京首都圏の不動産に限られます。
しかし、2020年東京オリンピックを控える東京首都圏の不動産価格は高騰しており、不動産投資をするにも多額の借金をする必要があります。
2019年現在、東京都市圏のマンションの平均価格は6,000万円に達しています。大半の人にとって銀行から融資を受けずに不動産投資を行うのは、ほぼ不可能であるというのが現実です。
また、銀行から融資を受けるにしても、持ち家の購入ではなく不動産投資をする場合は、低金利で借り入れができる住宅ローンではなく金利が高い不動産ローンを組む必要があります。
高金利で借金をするとなると、金利変動リスクにも晒されることになります。不動産投資をするサラリーマンが増加する陰では、銀行が大儲けしているのです。
空室・家賃滞納リスク
不動産投資では、毎月の賃料を得ることによって安定的な収入を実現することが可能になります。しかし、保有している物件に入居者が入らない場合は、安定した家賃収入も途絶えてしまいます。
家賃収入から借金返済を考えている場合には、借金返済計画に支障が生じてしまうことも考えられます。入居者が集まった場合も、必ずしも毎月の家賃収入を得られる保証はありません。入居者が家賃を滞納するケースもあり得るからです。
しかも、日本では、一度でも契約した賃貸住宅には住み続ける権利がある「借地借家法」があります。このため、家賃を滞納している入居者であっても、安易に追い出すことはできません。
家賃の滞納で借金返済計画に支障が出たとしても、残念ながら泣き寝入りするしかないです。
地価下落・空き家リスク
現在、空き家が日本の社会問題の一つになっています。2033年には、日本全国の3戸に1戸が空き家になると予測されています。空き家が増える一方で新築物件は次々と建築されており、需要と供給から考えたら、日本の不動産価格はこれから下がる以外にありません。
不動産価格が下落したら、入居者は家賃がより安い物件を探し求めるようになります。入居者集めに対応するためには、不動産会社は家賃を下げる必要があります。
つまり、人口減少と空き家問題で日本の不動産価格が下落したら、必然的に家賃収入は下落することになります。また、家賃は築年数によっても変わってくるため、ある不動産から得られる家賃収入は老朽化とともに下がっていくのが一般的です。
不動産投資をしたからといって、新築時に貸し出した家賃収入が一生に渡って続くわけではないのです。
投資信託のリスク
投資家から預かった資金をファンドマネージャーに運用してもらう投資信託は、高齢者を中心に人気の金融商品となっています。しかし、投資信託は自分自身の手で運用する必要がない分、大きなリスクを抱える金融商品でもあります。
個別株投資に比べると手数料が掛かる
投資信託は、投資のプロに運用を委託するという名目で、非常に高額な手数料(信託報酬)が発生する場合がほとんどです。
投資信託の平均的な信託報酬は運用額の約1%となっています。
個別株投資の手数料はSBI証券の場合で0.01%となっており(現物株1000万円の場合921円(税抜))、投資信託の手数料がいかに法外に高いかが分かります。特に、日銀のマイナス金利政策や新興のフィンテック企業の登場によって苦しい経営状況が続く銀行にとって、投資信託はおいしいビジネスとなっています。
2018年に金融庁が行った調査では、国内の銀行から投資信託を買った個人の46%が、手数料を差し引いた運用損益がマイナスだったことが分かっています。
※出典:金融庁
不動産ローンで金利収入を得られる不動産投資と同じく、投資信託でも結局、銀行が儲けているのです。
投資を委託するためスキルが付かない
多くの高齢者が投資信託ビジネスに引っ掛かってしまうのは、自らの手で運用するスキルがないからです。投資信託を買って、プロに運用を委託してしまうと、自分自身に運用スキルが身に付かないというデメリットがあります。
運用スキルを磨く時間が残されていない高齢者が運用を委託するならデメリットにはなりませんが、まだまだ人生の先が長い40代以下の人は、自分で運用スキルを身に付けた方が良い場合がほとんどです。
そもそも、運用を委託した所で、半分近くが手数料込みでマイナスになっているのなら、何もしないで銀行貯金しておいた方がまだマシです。
他人に運用してもらって結局マイナスになってしまうのなら、自分の手で運用して将来にも繋がる運用スキルを身に付けるべきです。仮に投資信託を買うとしても、手数料が安く、自分の手で売買できるETF(上場投資信託)を買うことをおすすめします。
【成功への道】投資のリスクを軽減する方法
投資をする上で、リスクを完全にゼロにすることはできません。リスクを完全にゼロにしたいなら、銀行預金に全資産を預けておくことをおすすめします。
ただ、投資のリスクはなくすことはできませんが、自分の手でコントロールすることはできます。リスクをコントロールして小さくする方法を抑えておきましょう。
分散投資を心掛ける
複数の金融資産に資産を分散する分散投資は、投資におけるリスク軽減策の最たるものです。分散投資をしなければ、長期間に渡って投資で成功するのは不可能であると言っても過言ではありません。
分散投資といっても、そこまで難しいことはありません。
例えば、株式投資だったら、自動車のトヨタ、ITのソフトバンク、社会インフラのJR東日本など、別々の業種の銘柄に投資しておけばいいのです。
とはいえ、考えなしに資金を分散させればいいということではありません。例えば、トヨタ、ホンダ、日産自動車の自動車メーカー3銘柄に資金を3分割で分けても、急激な円高が進んだ場合などに自動車株全体が売られてしまうためリスクヘッジになりません。
分散投資を行うときは、「このポートフォリオはリスクヘッジになっているか?」を考えて行うことが重要です。
経験を積む
投資における最大のリスクヘッジは、投資経験を積むことです。投資は経験がモノを言う部分が相当多く、過去と同じような相場展開になる場合が少なくありません。
かつてのオランダのチューリップバブルから、80年代の日本のバブル景気、2000年初めのITバブルなど、群衆の行動原理は変わっていないことが原因です。
単に過去と同じ失敗を繰り返さないようにするだけで、投資成績は急激に良くなります。個人投資家が経験を積むための方法としては、投資に関することを投資日記という形で記録しておき、後から読み返すことが非常に重要です。
また、投資顧問サービスのような有料サービスを使って、上級者から教えを乞うことも合理的な方法です。
【結論】一番リスクが小さい投資は株式投資!
今回は、多くの投資家に人気となっている株式投資、不動産投資、投資信託の3つの投資を、リスクの観点から見てきました。
リスクという観点から比較すると、株式投資に軍配が上がります。
不動産投資をするには、多額の借金をする必要があり、また個人が儲けを出せる物件はほとんど残っていません。スルガ銀行のシェアハウス投資や、レオパレス21の施工不良問題で、1億円以上の借金を抱えてしまった不動産投資家も少なくありません。
投資信託は、高齢者を狙った手数料ビジネスと化しており、金融庁が金融機関に注意喚起する事態にまでなっています。
一方、株式投資をするには、借金をする必要がないばかりか、東京証券取引所は個人投資家が投資しやすい環境整備を進めており、100万円の資本金があれば上場銘柄の98%以上を買うことが可能です。
また、ネット証券の登場で手数料も割安となっており、NISAやつみたてNISAを使えば利益額が非課税にもなります。
とはいえ、株式投資にも多くのリスクが潜んでいるのは事実であり、投資経験がない初心者は火傷してしまうことが少なくありません。投資顧問サービスのような上級者から効率的に学べる有料サービスを使うことによって、株式投資で初心者が陥りやすいリスクを取り除くことが可能となります。